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突然の町


【怒り】による発電の可能性はギョルト・レンが特異点の質量を収束させる性質を用いて空間差異を制御する技術を御術として提唱した時代には既に言及されていたと言われる。しかし、地中に【怒り】の濃集した層が発見され、安定的にそれを取り出す技術が見つかり、怒力発電が実用化されるまでには非常に時間がかかった。気分というのは非常に大きなエネルギーが取り出せるものの、反応しやすく不安定なのだった。
 ところでその町はともかく突然だった。生まれたのも突然だったし、吸収合併されるのも、放逐されてふたたび一個の町となったのも突然だった。市長が決まるのも突然、捕まるのも突然。人が住むのも、離れるのも突然。ほんとうは前触れがあるのかもしれないが、少なくともそれは予知として機能できるほど出来事自体と離れてはいなかった。ほとんど同時と言ってもいいだろう。ゆえにその町はいつも突然になにかが生まれたり失われたりするのだった。

 彼はかつて、突然、この町に生まれ、びっくりしている間もなく義務教育を終えた。そしてなんとなく生まれたことに関しての納得がいきだすと、余りにも何もかもが突然に起こったり終わったりする町が非常に不親切で腹立たしいと思うようになり、突然列車に飛び乗って町を出た。
 やがて彼は世の中に突然表面化することなどはなく、少なくとも水面下では何かが進んでいるためにそれが起こるのだということを大学で覚えた。突然町が生まれたのは移民のためであり、突然市長が捕まるのは不正のためであり、突然町を出たくなったのは成長したからだったのだ。
 納得がいくと、彼は一度、故郷に戻ってみようという気になった。列車の切符を買ったのは突然だったが、思いは突然ではなかった。長きにわたる微々たる郷愁が降り積もり、それをさせたのだということが、今の彼にはわかった。

#途中 #アンダーソン

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